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医療系のお話の記事一覧
咳のお話3連発です。
ただ、この話は特に書きたかったので(^-^;
よく患者さんから言われます。
『子どもの咳が昨夜ひどかったので、前にもらったテープを貼りました』
ホクナリンテープやツロブテロールテープという名前のものですね。
このテープ。気管支拡張薬の一種です(正確にはβ2刺激薬と言います)。
前回書きましたが、末梢性鎮咳薬の一つになるわけで、直接的な咳止めの効果はありません。
テープからじわじわと薬の成分が出てくるようになっていますので、効果がでるまでに4~6時間程度かかると言われています。
そして12時間後くらいに効果はピークになり、長時間効果が持続するようにできています。
なので、激しい咳に対して即効性のあるお薬ではないわけです。
当然のことながら、気管支を拡げるだけのお薬ですから、気管支が狭くなっている状態以外には効果ありません。
よって、使用する場合も結構限られています。
・気管支喘息
・ぜーぜー音がするような気管支炎
くらいです。
なので、呼吸の音を聞いて異常がない場合はほぼ使いません。
当然お薬ですから、副作用もあります。
・手足が震える(振戦)
・動悸がする
といった症状が典型的な副作用です。
頻度としても結構多く、10歳以下の子どもで1割以上の確率で手足の震えがみられたという報告もあります。
何度でも書きますが、使うお薬は少ない方が良いです。
『咳が出る』⇒咳止め、貼り薬、去痰薬etc...
というパターンは本当によく見ますけどね(^-^;
もちろん、ちゃんとした使い方であればしっかり効くお薬ですよ(^^)
結論。
ホクナリンテープ、ツロブテロールテープは『咳止めテープ』ではありません。
すぐに効くようなお薬でもありません。
必要な時はしっかり使うことが大事ですが、不用意には使わないようにしましょう(^^)

前回は『咳とは?咳止めとは?』ということで書きました。
咳止めの中でも『中枢性鎮咳薬』についてまで書きましたので、今回はそれに対する『末梢性鎮咳薬』について。
上の画像はとあるお薬の本です。
そこには『末梢性鎮咳薬には去痰薬、気管支拡張薬、局所麻酔薬(塗布)、含嗽薬、漢方薬、トローチなどがある。』と書かれています。色んな作用によって間接的に咳を抑えてくれるお薬と考えて良いと思います。
例えば、気管支喘息では気管支に炎症を起こし気管が狭くなり、さらに分泌液(痰)が増えます。
そういう時はステロイド(吸入や内服)を使用して炎症を抑え、気管支拡張薬(ホクナリンやメプチンなど)を使って気管支を広げ、さらに去痰薬(ムコダイン、ムコサールなど)を使用して痰を出しやすくすることで咳を減らす。という方法が考えられるわけです。
(もちろんすべての喘息にこの治療をするわけではありません)
こんな時に中枢性鎮咳薬を使用すると、せっかく痰を出す為の咳が抑えられてしまいます。
なので気管支喘息の場合は所謂『咳止め』はほとんど使わないと思いますし、あまり効果も期待できないと思います。
副鼻腔炎で後鼻漏(鼻がのどに流れこむ)が多く咳が出ている場合は抗生剤を使用して鼻水を減らすことが咳を止めることにもなりますし、胃食道逆流症で胃酸が逆流しその刺激によって咳がでる場合は胃酸を抑えるPPI(プロトンポンプ阻害薬)やH2ブロッカーといった胃酸を抑えるお薬が咳を抑えることになります。
原因によってアレルギーの薬が咳止めになったり、抗生剤が咳止めになることもあるわけです。
咳の患者さんは非常に多いのですが、原因もわからず漫然と中枢性鎮咳薬を使用し続けるのは何の治療にもならないので、なんやかんやと原因を考えながら、必要な時は咳止めを使用しつつ治療を行います(^^)
いきなりですが、花粉症ネタも時期外れになってきたので咳の話です。
咳の原因についてはだいぶ前にまとめました。
>せきの原因(1)副鼻腔炎
>せきの原因(2)喉頭アレルギー
>せきの原因(3)胃食道逆流症
>せきの原因(4)薬剤性・気道異物・百日咳
本当は咳の原因について書く前に書くべきだったかもしれませんが(^-^;
まず、咳とは?
咳はもともと、体に備わっている防衛のための反応です。
例えば、食べ物や飲み物が気管に入ろうとすると激しく咳がでます。
これは肺に食べ物や飲み物が入らないようにする反射です。
この反射が弱くなってしまうと、誤嚥性肺炎の原因になります。
変な言い方ですが、この咳は人間にとって『必要な咳』です。
もともと気管支の粘膜からは絶えず分泌液が出ています。
この分泌液が外から入り込んだホコリやウィルスなどの異物を絡めとります。
これがそのままだと呼吸の妨げとなってしまうので口の方に出そうと咳が出ます。
簡単に言うと痰を出す為の咳で、これも『必要な咳』。
ただし、炎症やアレルギーなどが原因で実際には痰がそこまで多くないのに、気道が敏感になってしまいちょっとした刺激で咳が出てしまうことがあります。
これは本来『不必要な咳』です。
咳が続くことで更にのどを痛めたりもします。
実際には『必要な咳』も『不必要な咳』も混じっていることもあり、こんな単純にはいかないわけですが(^-^;
止めた方が良い咳と止めない方が良い咳があるわけです。
単純に『咳⇒咳止め』ではダメということですね。
咳の原因をしっかり見極める必要があります。
次に咳止めについてです。正式には鎮咳薬(ちんがいやく)ですね。
一般的に使用される頻度が多い咳止めを挙げてみます。
麻薬性中枢性鎮咳薬
コデインリン酸塩、リン酸コデイン
非麻薬性中枢性鎮咳薬
アスベリン(チペピジンヒベンズ酸塩)
メジコン(デキストロメトルファン臭化水素酸塩化和物)
アストミン(ジメモルファンリン酸塩)
この辺りがよく使用される咳止めかと思います。
麻薬性というのは、読んで字のごとく麻薬が入っているということです。
コデインという麻薬になるわけですが、咳止めで使用されるのは簡単に言うと成分を薄くしており法律上は麻薬扱いにはなりません。
中枢性鎮咳薬は脳の咳中枢を抑制することで咳を止めるように働きます。
単純に咳の反射を抑えるわけですね。
なので、咳の元々の原因を抑えずに延々とこういった咳止めを続けるのは『治療』にはなりませんし、だいたいそういった時って咳止めの効果もイマイチ(^-^;
『中枢性』があるということは、『末梢性』もあるということですが...
それは次回に(^^)/

まだヒノキ花粉症が続いていますが、今回はスギ花粉の舌下免疫療法のお話です。
舌下免疫療法の詳しい話は⇒コチラ
リンク先で書いていますが、スギ花粉の舌下免疫療法に使用するお薬は『シダトレン』と『シダキュア』の2種類があり、これまでは『シダトレン』が中心でした。
この『シダトレン』は液体のお薬で特に最初の方は『1回何滴』という風に微妙な調整が必要だったり、冷所に保管が必要だったり、なかなか面倒(^-^;
しかしもう一つの舌下免疫療法のお薬『シダキュア』は錠剤になりますので、冷所保管の必要もなく旅行などにも持っていきやすくなります。
さらに『シダトレン』は12歳以上しか処方できませんが、『シダキュア』は年齢制限がなく5歳以上であれば問題なく行えるとされています。
(5歳以下で花粉症で困っているお子さんも少ないでしょうが)
また、『シダキュア』の方が1回当たりの用量が多く効果も良いのでは?というデータもあります。
というわけで、良いこと尽くめのような『シダキュア』ですが、昨年発売され、当院ではまだ使用しておりません。
その理由は、「新しいお薬は2週間までしか処方できない」という決まりがあるため。
しかし!
来月からこの処方制限がなくなります(^^♪
その一方、『シダトレン』は今後製造中止になっていくそうです(・_・;)
というわけで、これから舌下免疫療法を希望される方は基本的に『シダキュア』を使用していくことになります。
これまで『シダトレン』を使用していて、今後も継続が必要な方は『シダキュア』に変更も可能です。
しかしなぜ『シダトレン』を製造中止にしなくてはならないのか...
メーカーの方に聞いてみたところ、『シダトレン』も『シダキュア』もスギの花粉を原料に作られているので、両方作るには原料が不足するということでした。
『安心の国産スギ花粉を使ってますから(; ・`д・´)!!』
だそうです(^-^;
一昨日3月26日、熊本で桜の開花宣言がだされました。

(この写真は去年のですが...(^-^;)
耳鼻科医がよく使う言葉
『桜が開花するとヒノキの花粉症の時期』
というわけで...

花粉飛散予報も『ヒノキ中心』となっています。
しかも明日からずっと『非常に多い』予報((+_+))
スギ花粉症の方の多くはヒノキ花粉症もあると言われています。
スギヒノキ両方なら、2月中旬から5月初旬まで花粉症に悩まされるわけです。
その時期が過ぎるとスギ花粉の舌下免疫療法が開始できる時期になります。
今年の花粉はかなり苦しんだ方も多く、免疫療法に興味が出た方も多いかもしれません。
詳しくはコチラ
⇒『舌下免疫療法のページ』
このページ内に書いてますが、「シダキュア」というお薬が今年の5月から1か月処方可能になります。
これまでスギ花粉の舌下免疫療法では「シダトレン」という液体のお薬がメインでしたが、「シダキュア」は錠剤タイプになりますので、旅行などでも持ち運びやすかったり便利かと思います。
今年花粉症がひどくて大変だった方は検討ください。
カビのお話第3弾というわけで、のどのカビの話です。
のどのカビは基本的に「カンジダ」というカビが原因になります。
このカンジダ、実は誰ののどにもいます(常在菌というやつです)。
しかし、やはり免疫不全や糖尿病、抗生剤・ステロイドなどの使用によってカンジダが増殖してしまい発症します。
特にお口の中の「口腔カンジダ症」のことを「鵞口瘡(がこうそう)」と呼んだりもします。
乳幼児に発症することもあり、これは哺乳瓶などが清潔でないと発症するとも言われます。
軽ければしっかり清潔にしてあげるだけで治癒することも多いですし、症状もあまりなかったりします。

これはカメラでのどの上の方から見ている画像なので、わかりにくいかもしれませんが...(^-^;
こんな感じで白いものがのどに点々とつくことが多いです。
この画像では咽頭から喉頭(のどの奥)までカンジダを認めます。
進行するとこの白いものが取れにくくなったり、出血しやすくなったりもします。
ヒリヒリとした痛みがあったり、違和感だったり、味覚がおかしい、などなど色んな症状があります。
治療は抗真菌薬を使用することが多いです。
アムホテリシンB(ファンギゾンシロップ)、ミコナゾール(フロリードゲル)などの液体状のお薬を口の中に入れて、行きわたらせてから飲み込むような感じです。
もちろん、口の中を清潔に保つことも重要ですし、特に義歯(入れ歯)にカンジダが繁殖することもありしっかり清潔にしましょう。
不必要なステロイドや抗生剤を使用している場合はそれらを中止することも大事。
「のどが痛い」というだけで抗生剤を使用してはダメ((+_+))
さてさて、耳、鼻、のどとカビのお話をしてきました。
重要なのは耳、鼻で原因となるアスペルギルスや、のどで原因となるカンジダは『どこにでもいる』ということ。
アスペルギルスは空気中、ホコリの中にもいるし、カンジダは体中にもともといます。
しかし、体の方に免疫の異常を起こすと急に牙をむくわけですね。
そしてその原因は人間側が作ってしまっていることも多いのです。
耳掃除のし過ぎ、薬の使い過ぎ、口の清潔が保たれていないなど...
皆さん、気をつけましょう(^^)/
カビの話、第2弾!
鼻のカビについてです。
鼻のカビと言えば、『副鼻腔真菌症』。
通常の『副鼻腔炎』は細菌が副鼻腔の中で増えてしまう病気ですが、『副鼻腔真菌症』ではもちろんカビが増えます。
前回耳の話でも書いたアスペルギルスやカンジダ、さらにムコールというカビが原因になります。
当院のHPの中でも少し書いてます。
⇒鼻の悩み『副鼻腔炎』
副鼻腔真菌症はいくつかに分類されます。
大きく分けると『浸潤性』と『非浸潤性』、さらに『アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎』に分けられます。
さらに『浸潤性』の中で『急性浸潤性』と『慢性浸潤性』と分けられるので、計4つに分けられることになります。
ややこしいですね(^-^;
それぞれを簡単に説明します。
・急性浸潤性副鼻腔真菌症
この病気は非常に怖い病気です。
『浸潤性』というのは、副鼻腔から周りにどんどん進行していくということです。
副鼻腔の周りには骨があるので、まず骨を壊し、さらにその外の眼球や脳、血管まで影響を及ぼし、失明や脳梗塞などを起こし命に関わることも多い病気です。
糖尿病の方や、ステロイド・免疫抑制剤を長期的に内服しているなど、免疫不全状態の方に多いとされます。
・慢性浸潤性副鼻腔真菌症
上と同様に副鼻腔から周囲に進行しますが、進行は比較的ゆっくりです。
しかし、やはり周囲の臓器に進行していくので、早期の治療が必要です。
急性と比べると免疫との関連は薄く、糖尿病などの疾患がない方、免疫正常の方が多いとされます。
・慢性非浸潤性副鼻腔真菌症
『非浸潤性』ということは真菌が副鼻腔の中に留まるということで、『浸潤性』のものと比べると症状も軽いです。
ゆっくりと進行するので、全然症状ないのに『頭のCTを撮影したら偶然見つかった』ということもよくあります。
鼻の中を診察しても全然異常がないこともよくあります。
・アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎
カビに対するアレルギー反応によって症状が起こるものです。
アレルギー性鼻炎や喘息など、もともとアレルギー疾患を持っている方に多く、ポリープを伴うことも多いです。
以上の4つに分類されます。
症状もそれぞれですが、代表的には鼻水、鼻づまり、頭痛、鼻水に血が混じる、嫌なにおいがするなどです。
診断方法について、症状や鼻の診察では普通の副鼻腔炎と区別がつきにくいことも多くあります。
レントゲンを撮影してもはっきりと『真菌症』と診断は難しいです。
特徴として普通の副鼻腔炎は左右両方に起こしていることが多いのに対して、真菌症では片方だけのことが多いので、『片方の副鼻腔炎を治療しても改善しないのでCT検査まで行ったら、真菌症の診断になった』ということもあります。
CT検査は非常に有効です。


矢印で示した右の上顎洞という頬の内側の副鼻腔に真菌症を認めます。
特徴としては『石灰化』と『骨の肥厚』です。
CTでは骨が白く映ります。画面の中で向かって左側が灰色の中に一部白い部分が混じっています。この白い部分が『石灰化』と呼ばれるもので、イメージとしてはカビが固まって硬くなっているような感じ。
さらにその周りの骨が右側と比べて分厚くなっているのもわかりやすいかと思います。これも真菌症で特徴的です。
治療については基本的に手術。
特に浸潤性のものは手術で徹底的にカビを除去して、さらに抗真菌薬を全身投与します。
非浸潤性の場合はカビが粘膜以下に進行していないので、手術の後は抗真菌薬の全身投与は不要とされてます。
アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎は手術後にポリープなどが再発することも多く、ステロイドの投与も有効とされます。
ま~た長くなっちゃいました(^-^;
副鼻腔真菌症は手術での治療がメインになってしまうので、患者さんの負担も大きい病気です。しかも症状がなくても手術になったりしますので...
例えば、関係のない病気で頭部のCTを撮影した時
医『CT検査の結果ですが、脳には異常ありませんでした。』
患「ほっ(^^)」
医『しかし...』
患「(・_・;)?」
医『鼻の中にカビがいるかもしれません』
患「カビ!?」
医『手術をお勧めします』
患「手術!?」
なにも症状ないのにビックリ連発ということになりますので、医療者側もキッチリ丁寧に説明しなくちゃいけません(@_@)
次回はのどのカビについても書く予定です。
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